通常価格で飲み物を買うだけで、代金の一部を寄付できる募金型自動販売機。飲料大手ダイドードリンコでは、このタイプの自販機を用いた社会貢献を提案する「SDGs営業」で成果を上げている。神戸大学大学院の栗木契教授が解説する――。 【画像】門真市内の企業の敷地に設置された募金型自販機の例。 ■「SDGs」が課題解決型営業のチャンスに ここ数年、目にする機会の増えた「SDGs(持続可能な開発目標)」。よさそうな概念だが、これが営業の武器になるか。大阪市に本社を置くダイドードリンコでは、一方的にならない課題解決型営業のなかで、SDGsを販売機会の拡大に直結させていた。 SDGsは全地球規模の社会課題として国連が採択した、貧困の解消、飢餓ゼロ、気候変動対策や海洋資源の保全など、17の目標である。2030年までの達成が目指されている。気候変動から海洋資源、貧困から健康へと、課題の範囲は広い。そのもとにあって企業も、社会課題に対する幅広い責任を果たすことが求められている。 しかし、こうした企業の社会責任への対応が、本業の成果に直結すると認識されていたかというと、必ずしもそうではない。企業の社会責任への対応は、本業で上げた利潤を社会に還元する活動との位置づけにあることが少なくなかった。 そこに新たな変化が生じはじめている。 ダイドードリンコは、缶コーヒーを主力とする飲料メーカーである。国内清涼飲料の売り上げでは業界第7位で、業界のトップメーカーのような交渉力を、コンビニや量販店などの大手小売チェーンに対しては持たない。 そこでダイドーは自動販売機の設置場所を開拓し、直販ルートを確保する営業に活路を見いだしてきた。現在のダイドーは、自動販売機の国内設置台数で、コカ・コーラ、サントリーに次ぐ第3位の地位にある。
■先方の課題を聞き取り「自販機でできること」を提案 しかし今の日本では、自販機の設置は行き渡っている。「自販機はいりませんか」と持ちかけるだけの営業は通用しない。この変化を踏まえてダイドーは、近年は法人向けの課題解決型営業に力を入れている。自販機は、駅前や小売店の店頭だけではなく、オフィスビルや工場、病院や学校などの法人の施設のなかにも置かれる。あらゆる場所に置かれている自販機だが、知恵を絞ることで相手先の法人の課題解決に貢献する提案ができることは少なくないという。 相手先の法人がかかえている課題を聞き取り、自販機でできることを検討し、提案していく。脱プラスチックや食品ロス削減、地域社会への貢献など、飲料メーカーにできることはいくつもある。そのなかでSDGsが課題解決型営業のテーマとなることが増えてきているという。 ■地域の子供向け貧困対策事業に貢献 ダイドードリンコの西日本第一営業部に話をうかがった。2019年夏にはSDGs営業から、大阪府門真市でダイドーの募金型自販機が採用されたという。募金型自販機とは、飲料の売り上げの一部を、社会貢献活動を行う団体などに寄付する募金機能を備えた自販機である。 飲料の購入者にとっては、一般の自販機での購入と同じ価格の支払いで募金を行うことができ、負担を感じずに寄付に参加できる。設置者にとっては、ダイドーが開発済みの自販機を導入するだけなので、追加のコストが発生することもない。売り上げの何%を募金するかは設置者が決めることができ、総売り上げの1%を募金するという契約が全体の90%を占めるという。 門真市では相対的貧困率の高さが課題となっていた。大阪府との包括連携協定が契機となり、ダイドーは門真市の課題の聞き取りを進め、飲料メーカーとして何ができるかを検討し、提案を進めた。そのひとつとして自販機の売り上げの一部を市の子供向けの貧困対策事業に寄付する仕組みを提案したところ、市庁舎への自販機の設置が決まった。 ダイドーの自販機は情報発信のための機能も充実している。ダイドーの自販機であれば「子供の未来応援」をラッピングで訴えることに加えて、一台一台に吹き込んだオリジナルの説明を自販機にしゃべらせることができる。このように飲料の購入を寄付につなげるだけではなく、地域の課題解決につながる取り組みを視覚と聴覚に訴えることができることが評価された。 この門真市の募金型自販機については、同市内の企業などの賛同も広がり、これまでの1年半ほどの期間に15社を超える法人に採用された。地域の課題に応える自販機の設置は、地元の企業などにとっても実行が容易な社会的責任に応えた取り組みとなる。コロナ禍のもとでもこの募金型自販機の設置は順調に広がっているという。
「ドリンクを買うだけで寄付になる」思わぬ大成功になった"SDGs自販機"誕生秘話(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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